倫理的投資におけるリスクとは? 初心者が知っておきたいこと
倫理的投資への関心が高まる中、社会貢献と資産形成を両立させる魅力に惹かれる方は多いかもしれません。しかし、投資である以上、「リスク」は避けて通れない要素です。投資に不慣れな方にとっては、この「リスク」という言葉自体に漠然とした不安を感じることもあるでしょう。
倫理的投資も、一般的な投資と同様にリスクが存在します。大切なのは、そのリスクの種類を知り、正しく理解し、そして適切に向き合う方法を学ぶことです。この記事では、倫理的投資におけるリスクについて、初心者の方にも分かりやすく解説し、安心して一歩を踏み出すための情報を提供します。
投資における一般的なリスクの種類
まず、投資全般に共通する代表的なリスクについて確認しておきましょう。倫理的投資ファンドも、これらの一般的なリスクにさらされる可能性があります。
- 価格変動リスク: 経済情勢、企業の業績、市場の需給バランスなどの影響を受け、投資対象の価格が変動するリスクです。価格が下落すれば、元本を割り込む可能性があります。
- 信用リスク: 投資先の企業や国が、債務を履行できなくなる(デフォルト)リスクです。株式や債券などが、価値を失ったり大幅に下落したりする可能性があります。
- 金利変動リスク: 金利が変動することで、特に債券価格などが影響を受けるリスクです。一般的に、金利が上昇すると債券価格は下落します。
- 為替変動リスク: 外貨建ての資産に投資する場合、為替レートの変動によって円換算した際の価値が変動するリスクです。円高になれば、外貨建て資産の価値は目減りします。
- 流動性リスク: 投資したいときに投資できなかったり、換金したいときにすぐにできなかったりするリスクです。市場での取引量が少ない投資対象で発生しやすいリスクです。
これらのリスクは、投資対象や市場環境によってその度合いが異なります。
倫理的投資ならではのリスク要因
一般的な投資リスクに加え、倫理的投資が持つ特有のリスク要因も考慮する必要があります。
- 投資対象の限定による分散効果への影響: 倫理的投資では、特定の業界(例えば、タバコ、武器製造など)や企業(労働問題や環境問題で批判されている企業など)を投資対象から除外することがあります。これにより、投資対象が限定され、十分に分散が効きにくくなる可能性があります。特定の業種や企業に損失が出た場合に、ポートフォリオ全体への影響が大きくなることが考えられます。
- 「倫理的」基準によるリターンへの影響: 倫理的な基準を満たす企業やプロジェクトは、必ずしも高い経済的リターンを保証するものではありません。市場全体のトレンドから外れる場合や、短期的な業績が振るわない場合も考えられます。また、倫理的な基準を重視するあまり、高成長が期待できる企業を投資対象から外すことになる可能性もあります。
- ESG評価の不確実性や変化: 企業のESG(環境、社会、ガバナンス)への取り組みを評価する基準は多様であり、評価機関によって異なる場合があります。また、企業の取り組み状況や社会の価値観の変化により、評価が変動するリスクもあります。意図せず、当初考えていた基準と異なる企業が含まれる、あるいは除外される可能性もゼロではありません。
- 市場規模や歴史の浅さ: 一般的な投資市場に比べて、倫理的投資やESG投資の市場は比較的新しく、まだ発展途上にある側面もあります。これにより、関連するデータの蓄積が少なかったり、予測が難しかったりする場合があります。
これらの要因は、倫理的投資を選ぶ際に理解しておきたい点です。しかし、これらが倫理的投資を始めるべきではない理由になるわけではありません。これらのリスクを理解した上で、適切に向き合うことが重要です。
倫理的投資のリスクとどう向き合うか
リスクを正しく理解したら、次はそのリスクとどう向き合うかを考えます。投資初心者の方が倫理的投資を安心して続けるために有効な方法がいくつかあります。
- 長期・分散投資を基本とする: 投資の世界では、「長期・分散投資」がリスクを抑える基本的な考え方とされています。時間をかけて投資することで、短期的な価格変動の影響を和らげることができます。また、複数の資産クラスや地域、企業に分散して投資することで、特定の投資対象が不調でもポートフォリオ全体への影響を軽減できます。倫理的投資ファンドも、多くの企業やプロジェクトに分散投資しているものが一般的です。
- 無理のない範囲で少額から始める: 初めから大きな金額を投資する必要はありません。少額から投資を始め、市場の動きやご自身の感情の動きに慣れていくことが大切です。多くの倫理的投資ファンドは、月々数百円や数千円といった少額からの積立投資に対応しています。
- 自身の投資目的とリスク許容度を知る: なぜ投資をするのか、どのくらいの期間投資するのか、どの程度のリスクまでなら受け入れられるのか、といったご自身の状況を把握することが重要です。ご自身の目的やリスク許容度に合ったファンドを選ぶことで、市場が変動しても冷静に対応しやすくなります。
- 投資先の情報収集を怠らない: 投資を始める前に、ファンドの目論見書などをよく読み、投資対象、運用方針、手数料、過去の実績などを確認しましょう。特に倫理的投資ファンドの場合は、どのような社会・環境基準で投資先を選んでいるのかを理解することが大切です。投資を始めた後も、定期的に運用報告書を確認するなどして、ご自身の投資先がどのように運用されているかを把握するよう心がけましょう。
リスクは投資においてゼロにすることはできませんが、適切に理解し、上記のような対策を講じることで、その影響を抑えることが可能です。
リスクを理解することが安心への第一歩
倫理的投資におけるリスクについて解説しました。価格変動リスクや信用リスクといった一般的なものに加え、倫理的基準ならではのリスク要因があることをご理解いただけたかと思います。
これらのリスクを知ることは、投資への不安を煽るものではありません。むしろ、リスクを正しく理解し、適切な対策を講じることこそが、安心して投資を続けるための何よりのステップです。
ご自身の目的やリスク許容度に合わせて、長期・分散・積立といった基本的な考え方を大切にしながら、倫理的投資の第一歩を踏み出してみてください。倫理的マネーガイドでは、読者の皆様が賢く、そして安心して倫理的な投資を進められるよう、信頼できる情報を提供してまいります。